参院選2016特集
世論調査研究会 参議院選直前・序盤座談会
参院選2016予測
2016年7月8日 更新

世論調査研究会 各党獲得議席予測

世論調査研究会では終盤選挙情勢から各党の獲得議席数を予測した。
比較的違いが出たのは民進党の議席予測である。

議席予測(選挙区+比例)グラフ

選挙区と比例の議席数は次のような予測となった。

メンバー別予測 グラフ

■■■ さあ投票日、一人区の行方は ■■■

22日に公示された参議院選挙だが、舛添都知事の辞任による東京都知事選をめぐる動き、イギリスのEU離脱ショックなどで、元々盛り上がらないものがさらに低調になった感がある。政党間の政策論議はすれ違いで深まらず、投票率50%を切る可能性も指摘されている。

18歳選挙権については、政党・候補者の積極的アプローチや、メディアや自治体、NPOなどの啓蒙活動などで、注目が集まっており、思った以上に18歳19歳の投票率が上がるのではないかという予想もある。

さて、弊社では各新聞社・通信社の序盤情勢分析、終盤情勢分析を追ってきたが、3人区以上の複数区ではそれぞれの選挙区事情で最後の1議席、2議席を激しく争う戦いが続いている。一方、1人区の情勢はメディアによって分析が異なる選挙区も少なからずあり、こちらも予断を許さない。各政党も幹部をこうした激戦区に送り込み、候補者を浮上させるために必死の戦いを繰り広げている。

1人区情勢の遷移

一人区について読売新聞と日経新聞では、終盤で与党優位がさらに進み、朝日では序盤・終盤がほほ変わらず、産経では接戦区が序盤より増えるという分析がされている。前回のコラムでも触れたが、第2次安倍政権以降の衆議院、参議院、衆議院の3回の選挙ではアナウンス効果によるサプライズはなかった。
2016年6月29日掲載

世論調査研究会 参議院選挙直前・序盤座談会

RPJ編集部では年初からの気の早い週刊誌の参議院選議席予測データをまとめて参りましたが、今回世論調査研究会のメンバーにも公示日前日に座談会に参加頂き、直前情勢にさらにバーチャル座談会で序盤情勢のご意見を頂きました。内容にもあるように、都知事選の方が面白く、議論は拡散してしまいました。次回は各党獲得議席予想も発表します。

■ 世論調査研究会とは

月に一度、内幸町某所で、政治・経済全般やIR法の行方などについて議論を交わす中年男性の会合。メンバーはエコノミスト兼コメンテーター、某テレビ局編集委員、某新聞社記者(元世論調査担当)、大物元首長側近、大物国会議員秘書、外資系ロビイスト、メディアコンサルタント、調査会社役員(議員経験あり)の固定8名。時にゲストを読んで話を聞くことも。今回は7名で行われた。

■ 序盤戦、全体のトレンドは

全体として有権者の関心が低い、投票率も低くなるのでは

確かに、盛り上がってない。投票率は前回並みか。ただ、逆に、何かの契機で投票率が60%近くまで上がったりしたら、与党にとっては厳しい情勢になるかもしれない

メディア各社が実施した選挙前の連続調査をみると、安倍政権の政策についての評価は、経済政策であれ、安保政策であれ、社会政策であれ、総じて高くない。にもかかわらず、首相の支持率は堅調で、比例区投票先を問う質問でも、自民は高水準を維持している。今の政権与党に不満はあるけど、与党以外に日々の政治ができそうな勢力は見あたらず、消極的選択として現政権を維持するという流れが強いようにみえる。野党統一候補もその流れを変えるには至っていない

自民党への支持はオバマの広島訪問時がピークだった

舛添辞任に至る流れは自民党に逆風、参議院選挙への影響をあれ以上大きくしないために、最後は都議会自民党も時にやむ無しと舵をきった

舛添辞任直前の週末の調査ではマスゾエ効果で自民が票を減らしていた。たとえば東京選挙区は二人目の朝日の伸びが悪かった。しかし辞任後の週末の調査ではマスゾエ効果はもう消えていて、朝日もいい数字になっていた

■ 各党の戦略は?

民進党の戦略の根本に疑義あり。「憲法改正を許さない」という課題設定をしたために、「左の3分の1」を取りに行くことになった。これでは中道ががら空きになってしまう。自民党としてはありがたい展開で、「中道の2分の1」を取りに来られたら困っていたはず

前回選挙と比べた場合に、みんなの党の票がどこに流れるのか興味がある、おおさか維新に流れれば比例の議席がかなり取れるのではないか。一方で、「おおさか維新」という名前の「おおさか」が邪魔になっている感がある。あれがなければ、比例で随分取れたはずではないか。あるいは東京選挙区で、「なぜ田中康夫がおおさか維新なのか?」は誰も答えられないだろう。大義名分の怪しい戦いは、今日の選挙戦では不利に働く

野党が掲げる「立憲主義」は、国民の一部を除いては、ほとんど響いていない。「戦争法」も同じ。原発問題もものの見事に消えている。日本人の怒り(そもそも日本人は大きなテーマでは怒らないのかも。「せこい」話では悲憤慷慨するけれど)の持続力の弱さを、あらためて感じる

日本人、『せこい』話で怒るのは得意だけれども、原発とか深い話で怒ると『あの人はちょっとアレだから』と仲間外れにされる。でも『恨む』のは得意なので、沖縄の人たちなんかは結構、危ない水準に来ているような気もする。やっぱり『本土の人たちから無視されている』というのは辛いのではないか

憲法改正については、そもそも国民の賛否は二分しているわけだから、どちらかに強い風が吹くとは思えない。若い世代などでは、そろそろ変えてもいいのでは、というのが基調ではないか

野党の選挙協力も選挙区によって濃淡があって、1+1が2以上にならないケースが多く、野党の議席も伸びない

野党の集票の核となる連合も、まとまることができていない

(イギリスのEU離脱の報を受けて)大英帝国の欧州離脱は少なからず英語という同じ言葉で日々メッセージを送り続けている米国のトランプの影響があるし、グローバル化の見直しは世界のトレンドだと思う。安倍政権も本質はその流れの中にあり、こうやって不確実になるほど、民進党には不利になるだろう。改憲勢力2/3は有り得る

メディア各社の序盤戦での予測は『自民が単独過半数の57を確保し、改憲4党による2/3をうかがう勢い』。常識的にはアンダードッグ=判官びいき効果が出て、自民はこれから少し議席を減らすはずだが、判官びいきというのは判官に源義経のような魅力があることが前提。共産とくっついている今の民進に対し、自民か民進か迷っている中道有権者が「ひいき」するとは思えない。なのでアンダードッグ効果は限定的ではないか

■ 一人区注目の選挙区は?

与党が優位に選挙戦を進める中で注目は野党優位、接戦の選挙区

一人区では

東北6県では秋田以外は野党が優位ではないか

優位とみられた青森、野党現職が突然降りた岩手、現職大臣の福島も自民は厳しい

宮城、新潟、長野の減員区は候補者事情もあるが自民に厳しい

滋賀も民進林と自民小鑓が接戦だと言われている。世耕副長官はどこまで動けるか

三重は地元選出の岡田代表が、敗戦の場合は次期代表選に出ないと、文字通り首をかけた

愛媛も野党先行の報道もある

大分は自民古庄と野党足立が競り合っているとの見方も

沖縄は女性殺害事件の影響でさらに自民には厳しい


3議席以上の選挙区はそれぞれ予断を許さない情勢

複数区は面白い。2人区は自民と民進が仲良く1議席ずつ分け合う。お互いにハッピーである。ところが3人区4人区になると、自民と公明、民心と共産が「最後の1議席」を争わねばならない。野党協力は1人区だけが可能なのであって、複数区では互いに足をけり合っている

北海道は、自民長谷川が優位、残り2議席を自民柿木、民進徳永、民進鉢呂で争うが、与党と野党の力比べ

東京は自民中川、民進蓮舫、公明竹谷、共産山添が抜け出て、残りの2議席を自民朝日、民進小川、おおさか田中康夫が争っている

神奈川は自民三原、公明三浦が優勢、共産浅賀、民進金子、民進真山、自民推薦の中西、が2議席を争う。中西は麻生派議員が全面支援

兵庫は自民末松が抜け出したが、残り1議席を公明民主水岡、維新片山が争っている。兵庫は維新の勢力圏だが議席を確保し、比例出馬の片山虎之助との親子当選が果たせるか注目

大阪は自民松川、おおさか浅田、公明石川は安定、残り一議席を共産渡部、民進尾立、維新高木が追う展開、維新が2議席を確保できれば改憲勢力の4議席独占か

■■ 公示から一週間、メンバーからの追加コメントもあった。

足もとの情勢で言うと、Brexitでまたちょっと風向きが変わったような気がする。①参院選への関心がさらに低下した、②経済政策の焦点が(さらに)ボケてきた。とりあえず「増税先送りは結果オーライ」ということになった。③熊本地震と同じで、やはり与党に有利に働く、との印象がある。ついでに言えば、④英国政治のあまりのボーンヘッドぶりに「政治の怖さ」を思い知らされた、
⑤国民投票ってやっぱり怖い、憲法改正のハードルは高い、「ノスタルジー投票行動」が起きない日本は健全だなあ、という印象もある。

■■■ こんなにも違う一人区の調査結果 ■■■

各新聞社・通信社は 22 日、23 日に参議院選挙の序盤調査を行ったが、各社が与党優勢の分析を載せた。一方で一人区の情勢については、各社で大きく見方が別れ、下のグラフのような結果となった。 RPJ では 2001 年から毎月の各メディアの内閣支持率、政党支持率等を追いかけているが、この数字が大きく違うのは、各社調査方法がまちまちであることが原因と考えている。今回のように選挙直前、及び選挙期間中の選挙区情勢調査の場合にはそれに加えて、各選挙区を取材している記者の見方や、アナウンス効果を狙ったメディアの思惑も勘案しなければならない。
各社の一人区の情勢分析は毎日が自民の圧倒的優勢、読売と日経は接戦区が多く、朝日、産経、共同通信(東京)は野党が優勢な選挙区が比較的多い結果となっている。普段は野党よりと見られがちな毎日と朝日が全く違った見方をしているのが非常に面白い。 また通常は与党よりと見られる読売と産経が、正反対の情勢分析をしているのも面白い。
うがった見方をすれば、毎日は野党不利と書くことで、野党のアンダードッグ効果(判官びいき)を期待し、朝日はバンドワゴン効果(勝ち馬に乗る)を狙っていると言えなくもない。読売と産経もそれぞれ別の効果を期待しているとも推測できる。ここのところの国政選挙は ほぼ調査予測を大きく外さない結果になっているが、少なくとも序盤戦の一人区情勢分析では、新聞社でも勝ち負けがはっきりしそうだ。果たして今回はアナウンス効果でブレが出るのであろうか?
ちなみにお隣の韓国では、事前の議席予測が当たらなくなってきているらしい。先般の総選挙でも与党の惨敗はどのメディアも予測できなかった。

1人区情勢