7月11日に執行された参院選は、民主党が目標としていた改選54に届かず44議席の大敗に終わった。自民党は公明党との選挙協力により1人区での強さを発揮して改選51議席を獲得し、改選第一党に躍り出た。他の政党はそれぞれ議席確保に苦戦をするなか、みんなの党が民主・自民の批判票の受け皿として機能し、選挙区3と比例区7の計10議席と大躍進を遂げた。民主党は与党だけで参議院の過半数を握れない「ねじれ国会」となり、難しい国会運営が想定されるなか、公明やみんなの党に連立相手として秋波を送るが、公明党の山口那津男党代表、みんなの党の渡辺喜美党代表らは連立に否定的だ。
今回の参院選を受け、有権者はいまの政治の姿をどのように見ているのか。参院選後の各社世論調査から読み解いてみたい。


――8月3日更新

■7月の世論調査まとめ

7月中、新聞・通信社・テレビ各社の世論調査は株式会社ピーエムラボ調べで25件が行われた(当社対象の報道機関のみ)。そのうち参院選前の1~8日に13回、選挙後の13~29日には同じく12回の調査が行われた。


■内閣支持率

内閣支持が不支持を下回るも、下落に歯止めの傾向か

下のグラフ図では、各社調査の内閣支持率に青色、内閣不支持率に赤色を当てて図で表現している。
7月前半は菅内閣発足時の勢いを残して支持が優位に立つ社が多かったが、参院選を境に不支持が支持を大幅に上回る社が増えた。ただ、参院選後に調査を2回行っている新報道2001のトレンド(傾向)を見ると、7月15日調査では支持35%(不支持53.4%)から29日調査には支持40.4%(不支持49%)と、少なくとも首都圏における支持率の下落トレンドは下げ止まった可能性がある。今後の調査結果に注目である。

内閣支持率 詳細比較

内閣支持率調査データ


■政党支持率

みんなの党の躍進、なかには自民党に迫る調査も

下のグラフ図では、政党支持率にそれぞれ民主党にオレンジ色、自民党に青色、そしてみんなの党に緑色を当てて図で表現している。
こちらも参院選の前後で、民主党の支持率が下がり、その一方で自民党とみんなの党の支持率が上昇するなど、数値の出方が変化した。特に、参院選で大躍進を遂げたみんなの党は、選挙前後で5%から社によっては10%程度の支持率の伸びを示し、一部調査では自民党の支持率に急接近している。自民党もいくつかの調査では、民主党の支持の値に匹敵する数値を出していることに注目したい。

政党支持率 詳細比較

政党支持率調査データ




――7月27日更新

秋の民主党代表選や予算編成へ向けて各党の動きが伝えられるなか、時事通信(調査日7月16~19日)、毎日新聞(同7月23~25日)、日本テレビ(同7月24~25日)の3社で世論調査が行われた。

■内閣支持率

参院選後、これまで高かった支持を不支持が逆転する社が多かった内閣支持率は、時事が支持31.8%(不支持45.2%)、日テレが支持39.2%(不支持45.8%)、毎日が支持41%(不支持40%)という結果となった。いまだ参院選後の調査が行われない日経を除く10社が軒並み支持と不支持の逆転を起こしているなか、毎日だけが「逆転」を起こしていない点は興味深い。
以上の調査を踏まえ、当社独自の指標であるPML index(7月1~25日調査分)の7月期内閣支持率は40.7%、不支持率は43.7%となった。

内閣支持率 詳細比較

内閣支持率調査データ


■政党支持率

選挙後の党勢はどうか。政党支持率は、それぞれ時事が民主18%、自民16.2%、みんな5.1%。日テレが民主32.7%、自民24.7%、みんな10.1%。毎日が民主30%、自民15%、みんな14%となった。時事では自民が民主に接近した一方で、毎日ではみんなが自民に接近している。
面接調査で値が低く出る傾向のある時事、重ね聞きをするため「支持なし」が少なく政党に強く数値の出る日本テレビと、そして過去の経験から比較的数字がばらける毎日と、特徴的な数値の出やすい報道機関の調査が多かったと言える。


(時事の詳細な回答は未掲載のため、下記は主に日テレと毎日について記している。)

■連立を組むのに望ましい政党、部分連合について

日テレでは法律案成立のためにとる道として、「連立政権」が21.5%、「政策毎の『部分連合』」が67.3%と、連立を組むよりも政策毎の連合を求める声が多かった。上記の連立政権を望む人のうち、連立相手として望ましい政党は、みんなの党51.5%、自民26%、公明5.5%とみんなの党を連立相手として挙げる声が圧倒的だった。
毎日の調査では、「民主党がどの政党と連立を組むのが望ましいか」の問いに、「みんなの党との連立」が27%でトップ、そのあと「民主党単独政権」19%、「自民党との大連立」が13%と続いた。
ここでも「部分連合」を望むが、連立相手としては「みんなの党」という傾向が見て取れる。


■「首相にふさわしい」

この設問は、日テレと時事で聞いている。
日テレの結果は菅首相が19.7%でトップ。その他は振るわず、みんなの党の渡辺喜美代表が4%、新党改革の舛添要一代表と前原誠司国交相が3%程度である。「わからない、答えない」が6割もいる点は、日本政治における「リーダー不在」を物語っていると言える。
時事では、渡辺代表が前回4月調査の2位から浮上し11.4%でトップになったのは注目に値する。2位に菅首相10.8%、そして3位に舛添代表8.7%となった。これに民主党の前原氏、岡田克也外相が続き、そのあと自民党の小泉進次郎衆議、石破茂党政調会長、谷垣禎一党総裁が続いている。
時事における渡辺代表の浮上は、7月に入ってからの他の調査でも見られなかった傾向である。調査方法が面接調査であることや、オペレーションの違いが異なった数値の傾向として表れている可能性がある。


■消費税増税

消費税の引き上げへの是非については、毎日、日テレがともに聞いており、毎日は賛成45%、反対52%と消費税引き上げに反対意見が多数となった。一方、日テレは引き上げが必要だと「思う」64%、「思わない」29.7%となっている。
これは、16日更新分と同様に今回も設問文の違いによって結果が異なって出ていると推察される。
毎日では引き上げの目的などの説明なく消費税引き上げの是非を聞いているが、日テレは「財政の再建に向けて」と理由を挙げ、さらに「近い将来」という言葉を入れている。このことで、「消費税の引き上げが必要」だと言うことのハードルを下げている点は指摘しておきたい。

参考)設問文の違い
毎日「菅首相は民主党が参院選で負けた後も、消費税引き上げへ向けて野党と協議したいとの考えを示しています。消費税引き上げに賛成ですか。」
日テレ「菅総理は、財政の再建に向けて、税制の抜本改革に着手することを打ち出しています。あなたは、近い将来に、消費税率の引き上げが必要だと思いますか、思いませんか。」

また、消費税関連の設問として、日テレでは「参院選で民主党が負けた最大の理由」として「菅総理の消費税をめぐる発言」が最も多く挙げている(27.5%)。


■自民党が政権に復帰することに期待するか

毎日の調査では「自民党が政権に復帰することを期待しますか」と聞いている。それによると、「期待する」28%、「期待しない」71%と自民党が政権を担うことを期待しない声が多くを占めた。
同様の設問を朝日(7月12~13日調査、ページ下部の7月16日更新を参照)でも聞いている。設問文は違うが、その結果でも「政権を任せられない」という回答が多数を占めている。




――7月21日更新

民主党が大敗した参院選から1週間がすぎ、次の政局に向かって各党が動くなか、7月15日から19日の間にNHK、JNN、FNN産経、新報道2001、報道ステーションANNのテレビ各局が世論調査を行った。

■内閣支持率

参院選後の他社調査では、内閣支持率の支持・不支持の逆転が起きた。今回の調査でも、それぞれNHKは支持39%(不支持45%)、JNNは支持43.9%(不支持54.7%)、FNN産経は支持40.3%(不支持45.8%)、新報道2001は35%(不支持53.4%)、報道ステーションANNは支持34.3%(不支持45.4%)となり、支持・不支持の逆転に加えて一部調査では支持と不支持の差が10%ポイント程度まで開いた。
7月1日から19日までのPML index内閣支持率は、支持が41.9%、不支持が43.1%となった。

内閣支持率 詳細比較

内閣支持率調査データ


■政党支持率

政党支持率は、多くのメディアで民主の支持下降、自民とみんなの党の支持の伸びが見られた。それぞれJNNは民主28.5%、自民18.3%、みんな11.6%。FNN産経は民主28.0%、自民18.7%、みんな16.0%。新報道2001は民主21.8%、自民17.2%、みんな9.4%。報道ステーションANNは民主28.6%、自民26.2%、みんな13.1%という結果になっている(なお、新報道2001の設問は「次期衆院選の投票先」であるので、厳密な意味での政党支持率ではない)


■連立を組むのに望ましい政党、部分連合について

この設問は読売(7月12日~13日)に続いてNHK以外の調査すべてで聞いている。
結果は、選択肢の違いはあるがどの調査でもみんなの党を最も連立相手としてふさわしいと考えられており、その次に自民党、国民新、公明などが続く。
特にみんなの党は、新報道2001以外の調査では3~4割程度が回答しており、民主党の連立相手としてみんなの党を望む「世論」の声が大きいと言える。
新報道2001だけが傾向が違う理由は、ここの調査のみ選択肢として政党以外に「政策ごとに部分連合する」を入れており、5割程度の回答を得ている。FNN産経でも、設問を変えて「部分連合」について聞いていて、「他党との連立」よりも「部分連合」を求める声が7割近くとかなり大きかった。
これら調査からは、政策ごとの部分連合を民主党に望むが、もし連立政権を組むならみんなの党と組んでほしいと世論は見ていると言える。


■「首相にふさわしい」

参院選を終えて、民主党内部で菅首相責任論が噴出するなか、JNN、FNN産経の調査では「首相にふさわしい人物」についての回答がある。
どちらの調査でも、参院選前と変わらず菅首相が最もふさわしいとされる一方で、参院選前と後とで数値が変わった人物としては、渡辺喜美・みんなの党代表がじわじわと数字を稼ぎ、舛添要一新党改革代表は政党への注目度とともに支持を下げた。
首相にふさわしい政治家
JNNとFNN産経の「首相にふさわしい政治家」調査

しかし、どちらの調査でも最も値の大きい菅首相でも1~2割の支持しか集めておらず、「ふさわしい人はいない」の回答が数値としては一番大きいのが実情だ。


■消費税増税

菅発言以来、注目を集める消費税増税については、FNN産経、新報道2001、報道ステーションANNが聞いている。
 これらの調査では、菅首相が進めようとしている与野党協議を設けることや、消費税増税自体への賛意は示し、消費税増税の議論を進めることを歓迎しているが、報道ステーションANNの調査で消費税改革案の来年度以降への先送りを「評価」し、また2~3年以内の税率引き上げを支持している。
 それぞれの調査や消費税増税発言を参院選の敗北の原因に結びつける声もあることも考えると、有権者が消費税増税について「議論は歓迎、実行は先送り希望」という見方をしていると言える。




――7月16日更新

参院選後初の世論調査は、朝日、読売、共同通信の各社にて7月12~13日に行われた。

■内閣支持率

朝日が支持37%(不支持46%)、読売が支持38%(不支持52%)、共同が支持36.3%(不支持52.2%)とすべての調査で「支持しない」が「支持する」を上回った。6月8日の内閣発足直後の調査では60%を超えていた支持率であるが、約1カ月の間に20%も下落し、支持と不支持が逆転した。

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内閣支持率調査データ


■政党支持率

政党支持率は、それぞれ朝日が民主27%、自民21%、みんな9%。読売が民主28%、自民24%、みんな12%。 共同が民主31.7%、自民27.6%、みんな16.3%となっている。
各社調査で、自民とみんなの党が選挙前よりも大幅に支持を伸ばしている点は興味深い。これは先の参院選での比例区得票率と傾向が似ていると言える(民主が得票総数約1,845万票で得票率31.6%、自民が約1,407万票で24.1%、みんなが約794万票で13.6%)。選挙前後でのこの変化は、自民やみんなの支持率が参院選の結果やメディアの論調の影響で「反民主、非民主の方向に引っ張られている」可能性がある。


その他、参院選関連の設問も多く設定されているので紹介したい。

■「菅首相は辞任すべきか」

 参院選敗北の責任を取って菅首相は辞任すべきか。この設問には、各社ともに「辞任する必要はない」との意見が大半を占めた。

■「与党が参院選で過半数を取れなかったことはよかったか」

 この設問も各社が聞いており、すべての社で「よかった」という回答が多かった。ただ、共同のみ「よかった」29.4%、「よくなかった」19.8%の他に「どちらともいえない」が5割近くと、他社と傾向が違っている。

■読売「民主と連立政権を組むのに最も望ましい政党」

 「ねじれ」国会の解消のためには、連立政権を組む必要がある。読売の調査ではその相手としてみんなの党35%、自民14%、国民新・公明7%の順に挙げている。

■「消費税増税の是非」

 菅首相の発言が参院選に影響したこともあり、この設問も各社設問に入っている。
 朝日は反対多数である一方、読売・共同は賛成多数と判断が逆転している点が興味深い(消費税引き上げに対し、朝日「賛成」35%、反対54%。読売「必要だ」64%、「そうは思わない」32%。共同「賛成+どちらかといえば賛成」52.5%、「反対+どちらかといえば反対」44.7%)。この違いは「設問文の設定」が違うためだと推察される。
 朝日は単純に賛成、反対を聞いているが、読売、共同の設問は前段として財政再建、社会保障のためだという説明を設問文に入れている。

参考)設問文の違い
朝日「◆消費税の引き上げに賛成ですか。反対ですか。」
読売「◆財政再建や、社会保障制度を維持するために、消費税率の引き上げが必要だと思いますか、そうは思いませんか。」
共同「問10 あなたは財政再建や社会保障のため消費税率を引き上げることに賛成ですか、それとも反対ですか。」


■朝日「いまの自民党は政権を任せてもよい政党だと思いますか」

 朝日は改選第一党になった自民党について、「政権を任せてよいと思うか」を聞いている。それによると、「政権を任せてもよい政党だ」17%、「そうは思わない」64%と、自民党に政権を任せてはいけないという回答が大半であった。  自民党が事前の予測よりも票も議席を獲得したが、有権者は政権を任せてもいいと判断して投票したのではないと、朝日の調査からは読み取ることができる。