情勢が定まらない大阪選挙区
【RPJ編集部】
大阪は、どうでしょうか。
【富士夫】
岡部の評価が問題ですね。
【角谷】
岡部の評価ははっきりしないが、選挙活動の「しゃべらない戦法」が不評らしい。
大阪は、結局おばちゃんの評価。「吉本枠」なのに「なんでしゃべくりがないんだ」と思われているので、評価が変わってきているのでは。
【かんべえ】
彼女の売りは、原稿を読んでいるだけなのに「噛んでしまうこと」なのに。
【富士夫】
そうなると、岡部が届かない可能性がありますよ。
【角谷】
北川はみんな評価が高いけど、どうなのだろう。
【RPJ編集部】
実際は橋本知事の立ち上げたグループに選挙の手足である府議会議員や市議会議員を取られているので、そんなには楽ではないと思いますが。
【角谷】
北川より川平のほうがありうるんじゃないか。
【RPJ編集部】
それでもその2人は4番手争いですよね。
【角谷】
公明の石川が当選すると見ているということ?
【富士夫】
公明が大阪で負けることがあるのかなあ、と。
なので、尾立、石川が優勢で、残りの3つ目を岡部、北川で争っているという構図ではないですかね。
【RPJ編集部】
みんなの党は届かないかもしれません。
次の兵庫はいかがですか。
【富士夫】
ここは最初、民主党がすごく悪かった。神奈川に似ていて移ろいやすく新しもの好きな地域性があったんですが。いまは末松、水岡が強いですね。
【RPJ編集部】
奈良は、民主。
和歌山は、自民。
鳥取が難しい。
【角谷】
鳥取、島根は難しいね。
【RPJ編集部】
鳥取は、いまは接戦だけど、最後には、坂野に票が乗るんじゃないかと思います。
【角谷】
坂野は経歴がいい。自民党の坂野重信・元自治相の孫で、医者で政経塾。それがだんだん浸透したのだろう。
【RPJ編集部】
島根は、青木は負けないでしょうね。
【富士夫】
そうですね、さすがに負けないと思います。
【RPJ編集部】
岡山、広島、山口はこれまでの情勢のままでしょう。
そして四国。
徳島は…自民党が候補間で割れてしまっていますので、民主で決まりそうです。
香川は、接戦。終盤に女性に票が行くのか行かないのかというところでしょうね。
愛媛は自民が強い。
高知は広田が有利か。
自民は九州でどれだけ勝てるのか
【RPJ編集部】
福岡、佐賀も固い。
長崎ですが、ここは接戦ですか。
【富士夫】
長崎は本来、金子が勝ってもいいんだけど…ここは圧倒的に自民の組織が強いところですから。
【RPJ編集部】
それでも、前回の衆院選では自民候補が負けましたよね。
【富士夫】
「民主風」でね。ただ、あの風は今年2月の知事選で終わったでしょうから。
【角谷】
つまり、接戦ではないけど、何がのっかるのかわからないところで、逃げ切ったという感じがしない選挙区がけっこうある。
【RPJ編集部】
熊本は、接戦だけど民主票が少しみんなの党に流れて、最後に松村が浮上するのではないか。
大分は、足立。
宮崎は、接戦ですね。
【富士夫】
松下が渡辺に相当追い上げられている現状ですね。それまで楽勝だったのが、菅内閣になって差がガーッと一気に縮まった。
でも、内閣発足直後に逆転できていないのに、これから抜けるのかなあ。
【RPJ編集部】
鹿児島の情勢は。
【富士夫】
ここも柿内が野村に追いついたみたいです。まだ追い越してはいないけれども。
【角谷】
野村は知名度があるし、口蹄疫問題に対して野村の「JA鹿児島出身」というのは強いんじゃないか。
【RPJ編集部】
終盤、年齢が低いほうに票が流れるでしょうから、それだと柿内が勝ちそうですが…
10歳しか違わないので、あまり票が動かないかもしれない。
【角谷】
ここで落としたら、長崎・鹿児島の「自民王国」は崩壊だろう。
【RPJ編集部】
むしろ、全国で「自民王国」なんかなくなってしまいます。
それでは最後に沖縄です。
【富士夫】
島尻氏強いです。
【角谷】
強いというより、他候補がいない。
九州のなかでも長崎、熊本、宮崎、鹿児島は接戦でまだわからない。
【RPJ編集部】
ここはもともと自民党が強いところですね。
【角谷】
本来であれば、すべて自民が勝つ。ここを全部勝てば、民主は50議席前後ではないか。
富士夫氏「民主に自民を抜く力があるか?」
【角谷】
それにしても一歩抜け出したというところが本当に少ない。
【富士夫】
自民が勝っていたのが、民主に追いつかれている。
ただ、民主にいま抜く力があるのか?そこですよね。議席がどうなるかというのはそこにかかっています。50議席前後で予測している人は「抜けない」だし、50議席中盤以上の人は「抜ける」と見ている。
僕は抜けないと思うんですよね。
【角谷】
色々な見方があって、政党は民主が抜け出すと見ているから危機感が出てきているけど、「なぜ民主が抜けるか」という根拠は見当たらない。
また、今回の選挙が衆院選と違うのは、「この選挙はなんのための選挙なのか」というのがいまだにわからないところ。衆院選は「二大政党を小選挙区で選んでいた」。
ちょっと前までは民主に対する信任投票かと思っていたら、「前のマニフェストは捨てます」と言う。マニフェストは「国民との契約」じゃなかったのか。
民主党支持層の「民主党離れ」になったときに、みんなの党が受け皿になればよかったのだが、枝野幹事長が「一緒にやろう」と「抱きつき戦術」をやったらぐちゃぐちゃになった。
【かんべえ】
民主党が消費税を言い出して、政策論争の第二戦線を作ったのは正解だと思います。
4者の議席数予測
【RPJ編集部】
それでは、予測議席数に話を移したいと思います。
僕の予想の数字は、前回56議席よりも増えて、民主がさらに議席を1つか2つ積み増す可能性が出てきたと思います。
接戦の選挙区で半分とったとしたら58議席。民主が自民の勢いを上回って万が一勝ったら60議席に届く計算です。民主をプラス2にして公明、みんなを1つずつ減らします。
【角谷】
前回は比例を16議席と低く見積もっていたので、20 議席に修正せざるを得ない。
【富士夫】
たしかに民主の比例は19~20議席は取りそうですよ。
【角谷】
なので、比例を前回プラス4の20議席で計算し、選挙区の情勢変化を鑑みると、前回の予測52議席プラス6議席で58議席が今回の予測になる。
【富士夫】
私は、民主は比例では強いけど、1人区では意外に弱く、複数区でもあまりたくさん取れないという状況じゃないかと思います。なので私の予測は、比例区19議席、選挙区33議席で計52議席になります。
【角谷】
ポイントは2つあって、消費税議論が飛び出した不安感が反映されて、比例を少なく見積もっていた。
ところが、国民が消費税増税を受け入れているわけではなく、「新・抱きつき方式」が出来始めた。
まず、小沢元幹事長が批判を始めたこと。これが、「うちはうちで勝たせます」、つまり「二人区の二人目は俺が勝たせてやる」という風に、それぞれで勝っていきましょうという作戦に出始めている気がする。
小沢の理屈としては、それを言い続けていることで、執行部が行かない場所に行く理屈になるから、自分の面倒見たいところに応援に行く。結果的に自分が行った選挙区で負けたとしても、「私は筋を通しました」と言える。
そして、「マニフェストで約束したことをやらないというのはおかしいと思う」と数か月は執行部に向けての揺さぶりに使える。
なので、今の小沢の発言と子飼い候補の応援は、のちのち数か月使える揺さぶりになるのではないか。「新・党内抱きつき」攻撃ではないかと思う。
菅首相はブレブレ状態なので、それを有権者が推しはかるのは無理な話で、そういう面から言うと小沢の選挙戦術的な効果は見込めないが、「私は日本全国で言い続けた」ということは残る。
角谷氏「小沢は党代表選後、議員70人連れて党を出るのでは」
【富士夫】
それで参院選を大勝してしまったら、菅内閣が安泰になってしまって小沢にとっては面白くないのでは?
【角谷】
そう思うでしょ?
でも僕は、9月の代表選は主戦場でないような気がしている。代表選はおそらく、信任投票になる。それに「納得できない」と言って、小沢派議員を70人連れて党を出るのではないか。
【一同】
ほう…
【角谷】
飛び出したら100人は内閣に入っているんだから、議会では少数与党になる。だから70人で連立を組めばいいんですよ。
【富士夫】
でも、70人で連れ出すと言ってもそんなに簡単なものではないはず。与党に所属する魅力はある。
【角谷】
だから、形としては連立を組むということ。つまり「ここで民主を陥れたらマニフェストを実現する約束を守れない。私たちが衆院選マニフェストを継承する政党です」という理屈。
【かんべえ】
でも、もう1年近くたっているから、マニフェストの記憶は日に日に薄れていくのではないかなあ。
【角谷】
小沢の理屈は、「苦しくても約束したことは守りましょう」。今の政権は諦めてしまっている。あのときの民意を忘れて、直近の民意を尊重する菅内閣の限界。だからマニフェストを諦めてしまえる。
【RPJ編集部】
それには小沢の擁立した複数区の候補者が当選する必要がありますね。
【富士夫】
でも落ちる人が多いと思いますよ、きっと。ただ、複数区擁立のおかげで比例区得票が増える。これは小沢の功績でしょう。
【RPJ編集部】
僕は、投票率は下がると思っている。衆院選の時と違って、政権交代も実現し、選挙自体のテーマが有権者、浮動層に伝わってない。なので投票率が下がったときに組織選挙をギリギリやった小沢の戦略が生きて、民主党の候補が浮上する可能性があるんじゃないかと思います。
【角谷】
敵の敵は味方のような。
かんべえ氏「投票日3日前くらいに雰囲気が変わるだろう」
【RPJ編集部】
かんべえさんの予測はいかがですか。
【かんべえ】
あえて「50議席を割る」という少数意見を言ってみたのですが、少しトーンダウンすることにしました。民主50、自民47、みんな9、公明8、共産4、社民2、たちあがれ1。今年はやはり、投票日3日前に雰囲気が変わるパターンになるかなあと思っています。株も下がっているし、不穏な感じがするんですよね。
【富士夫】
有権者の民主への期待って、そんなに強いと思いますか?
【かんべえ】
民主をよく知らないから、期待しているという面があると思います。菅内閣も最初は支持率が高かったけど、1週間に5ポイントずつ下がっているわけですね。実態が分かるにつれて支持が下がるということもあるかと思います。
民主への逆風はあるのか
【富士夫】
相当数の人が「民主に議席を取らせ過ぎたら良くない」と思っていると思いますよ。
【RPJ編集部】
でも民主から離れた票の受け皿に、自民がなれていない現状です。みんなの党も伸びない。自民が受け皿にならないと投票にすら行かないということになる。菅内閣の支持率は徐々に下がっているのに、実は参院選の投票先で民主党はここ2~3週間であまり下がってないんです。
そもそも現在の内閣支持率は、いままでの内閣が選挙につっこんだ状況と比べると、まだ高止まりしていると言える。なので、それほど民主に逆風にならないで選挙を迎えるのではと思います。
【富士夫】
下がったと言えど、50%前後ですからね。そういう意味で言うと、この選挙で過半数がとれないことがおかしいとも言えます。
【RPJ編集部】
その通りだと思います。
参院選の投票日まで、残すところあと1週間となりました。今日も終盤情勢について様々な議論をいただきありがとうございます。参院選の後には、同様に結果を振り返って分析、解説する機会を設けさせていただきます。本日はまことにありがとうございました。
【角谷】、【かんべえ】、【富士夫】
ありがとうございました。